新型コロナ(COVID–19)対応 家庭での子どもの過ごし方
New Corona(COVID-19)Correspondence: How to spend children at home
早稲田大学教授/医学博士
前橋 明
2020年、わが国では、新型コロナウイルス(COVID-L9)の感染拡大を防ぐために、悪戦苦闘の最中です。
全国の約 L,300 万人の子どもたちの健康管理上の留意点として、子どもの居場所の確保をすることが大事で、
そこでは、「消毒」や「手洗い」、「うがい」の励行、「タオルやハンカチ共用」の回避などが、
感染防止のための努力として、基本的には必要不可欠な事柄ということです。
集団感染というものは、換気の悪い密閉空間や、多くの人が密集している所、近距離での会話・発声のある場所で、
起こりやすい特徴がありますので、密閉空間に大人数が密集する所に、子どもたちを出かけさせることは控えたいものです。
つまり、避けたい場所は、集団感染の危険な環境としての「密閉空間での換気の悪さ(密閉)」、
「人が密に集まって過ごす場所(密集)」という悪い条件がそろっている場所です。
そして、子どもたちの「濃厚接触の起こる可能性の高い場所(密接)」は避けたいものです。
学校の教室よりも狭い場所で、しかも、大勢の子どもたちがいっしょに一日を過ごすような場所は要注意です。
子どもたちは、健康面や安全面で、むしろ、ネガティブな影響を受けると心配します。
「人の集まる場所への外出を避け、基本的に自宅で過ごすようにしてもらいたい」わけですが、そうなると、どうしたらよいのでしょうか。
まず、先生や保護者が、共通意識のもとに、子どもに、コロナウイルスと休園・休校の理由や意味をしっかりと伝えて、
普段の夏休みや春休みのように外で自由に遊べない点を、しっかり理解させることが重要です。
あそびの面に注目しますと、子どもたちが家庭内にとどまり続けると、ストレスがたまり、心身の健康面が心配になります。
そこで、家庭内で、少しのスペースで、道具がなくてもできる、体力づくり運動や親子ふれあい体操を、
子どもたちや各家庭に、ポスターにて配布・配信して、子どもたちの健康維持につなげていきたいのです。
そして、自分の命や健康は、自分で守るという意識を、子どもたちに、しっかり浸透させたいです。
そのために、生活面で必要なことを列挙してみますので、使えるものは使ってみてください。
1.早寝の知恵
- 日中にしっかり遊ばせて、心地よい疲れを得るようにさせる。陽光を浴びながらの散歩や外あそびは、極めて有効です。
- 早めに食事と風呂をすませる。夕食の開始は、午後7時より前がお勧めで、寝る前に、飲食はさせない。
- 寝る時刻やテレビを見る時間を決める。テレビやビデオを遅くまで見せない。テレビは、早い時間帯だけにする。
- 寝る前に、過度な身体運動をさせない。眠りの前に活発な運動をし過ぎると、体温が上がり、かえって大脳が活性化して眠れなくなる。眠る前には、入浴をしてからだを温め、リラックスさせることがよい。
- 安心して眠れる環境を作る。テレビや灯りをつけない、優しい音楽を流す等の工夫をする。子どもの寝室には、テレビの音が聞こえないように静かに保つ。
- 保護者が、「夜、子どもを連れ出さない」という基本姿勢をもつ。
2.早起きの知恵
- 子どもが寝ている部屋のカーテンはうすめのものを選び、朝日が射し込むようにする。朝になったら、カーテンを開けたり、外の新鮮な空気を部屋の中に入れたりする。
- 子どもが寝ているベッドの位置を窓の近くにして、朝の戸外の音(小鳥の鳴き声や生活音など)が自然と入りやすくする。
- 起きる時間に、子どもの好きな音楽をかける。
- 親が早く起きて、早起きの見本を示すとともに、朝の楽しい雰囲気を作り出す。
- おいしい朝食を作り、子どもが「今日の朝ご飯は何?」と、楽しみに起きてくることができるようにする。ときに、朝食のにおいを寝床に流す。
- 子どもの好きな目覚まし時計を利用する。
3.日中のあそびや運動に集中する知恵
- 前夜からよく寝て、疲れを回復させておく(十分な睡眠をとらせておく)。
- 朝食をしっかり食べさせ、朝にウンチをすませ、すっきりさせておく。
- 保育園や学童保育に行かせるのであれば、朝、子どもを気分良く送り出す。笑顔で送り出す。
- 保育園や学童保育の現場では、保育者や指導者も、子どもといっしょに遊び、楽しさの経験ができるあそび、家で保護者と楽しめるからだ動かしを紹介・伝承する。
- 子どもの興味のあるあそびや運動をしているときには、そっとして熱中させる。
- 上手に運動しているところや良い点は、オーバーなくらいしっかり誉め、自信をもたせ、取り組んでいる運動を好きにさせる。
- 子どもが「見てほしい」と願ったら、真剣に見て、一言、「よかったよ」とか、「がんばったね」と言葉を添える。どこが良かったかを伝えると、真剣に見てくれていると思い、安心できる。
- 子どもがからだを動かして遊んだら、「よく遊んだね!」と言って誉めてあげる。ふだんから、からだをよく動かすことを、奨励する習慣にしておく。
4.夜食を食べないための工夫
- 朝・昼・晩の三食を、バランスよくしっかり食べさせておく。
- 日中にあそびや運動、活動をしっかり行わせ、夕食時には、おなかがすくようにさせる。
- おやつは、日中の決まった時間に与え、夕食に差し支えのない量を食べさせる。
- 夕食前のおやつは食べさせない。午後4時以降は、おやつを食べないルールにする。
- 夕食は、『十分に食べた』というくらいしっかり食べさせる。
- 夕食後から寝るまでの間は、食以外のことを行う。例えば、子どもに本を読んで聞かせたり、一日の出来事を話したりして、できるだけ親が子どもといっしょに楽しく過ごす。
- 夜食を食べない習慣を、家族が協力して作る。
もうひとつ欠かせないのが、居住している地域全体で、子どもの安全や健康を見守る大人たちの意識です。
理由もなく、出歩いていると思われる子どもに対しては、保護者のつもりで、「どこに行くの? 大丈夫?」「家にいた方がいいよ!」等と、
声や言葉をかけてほしいものです。
子どもたちの抱える・抱えさせられている問題の防止に欠かせないもの、効果的なものは、他者の温かい目です。
健康上、安全上の問題はないか、不審者はいないか等に注意を払い、買い物や散歩ついでに、公園や広場を覗いてみる等して、
自分も子どもたちの健康管理や安全管理に重要な役割を担っていると考えて行動してもらいたいのです。